麻酔銃

貴方がくれた 嫌いと一言 最後の優しさ

沖縄の夏

私がアル中になって3度目の夏が来た。

本来依存症を頼りに夏を数えるもんじゃないがそれほど私の生活に変化がないのだ。

沖縄の夏は暑い。梅雨明け目前だとニュースで言っていた。

老朽化した学園ヘルスの個室は熱を逃がす気すらない鉄筋コンクリート造りで、私はセーラー服でぜいぜい言いながら客を待っている。こんなデロデロの女に客も会いたくなかろう……気の毒に思う。

 

私は色々あって元客で40代長めの前科持ちのおっさんとしょっちゅう会って適当に過ごしている。

おっさんは私に好きだと言う。

それがセックスの対価なのか、本心なのかは分からないしもう考えないことにした。

都合のいい女で構わない。

人の気持ちは日々移り変わるし、ちょっとした出来事で愛が無くなることもある。

 

おっさんの友達との飲み会にも何回か呼ばれた。(昔からの友達らしく、沖縄じゅうの喫煙者を集めたのかと思うぐらいみんな煙草を吸っていた) 

とある日、三次会あたりのバーで私はビールをいっぱい飲んでテラスのベンチで寝たふりをしていた。

おっさんが「いつもより楽しそうだな」と言われている声が聞こえた。

 

私はなぜか嬉しかった。

認められた気がした。

 

彼氏がいるのに1人に絞れないのは悪なのか?

正当化するなら、誰からでも好意的に見られたら嬉しいのだ、少なくとも私は。

 

泊まった日に朝起きると、バッグの中にはセブンのスナック菓子と大量のハイボールが雑に入れられていた。

おっさんは知らないうちに仕事から帰って寝ていた。

 

私は何になりたいのか?

何が欲しいのか?

 

いつからか、誰からの愛でも拒めないし欲している。

 

私はハイボールを飲み、ベランダから朝の海を見た。

 

 

 

 

追記

 

前読んだ百田尚樹さんの「モンスター」を思い出した。

主人公の女性は美しくなった後、整形する前に昔働いていた風俗店の店長を思い出す。

 

「この人は私の全てを知っている。それでも愛してくれるなら、本当の愛かもしれない。」

(セリフに相違があるかもしれません)

 

おっさんは私が風俗で働くことも、彼氏がいることも、援交していたことも、全て知っている。頑張ってるな、無理するなよ、とだけ言った。

 

本人にも、好きかなんて分からないかもしれない。

 

 

寝言で、どこ行くんだよ、行くなよ、と言ってたのが本心だと信じて

 

 

私も寂しいのが1番嫌いだ。

そろそろ寝ようと思う。