麻酔銃

貴方がくれた 嫌いと一言 最後の優しさ

裸足で逃げる

半年以上勤めた風俗を辞めた。

正確には、脱走に近い。

限界だと思った。

 

最後のお客さんは本指で、

「すいません、今から脱走するんです」

「知らないフリしててください。」

ひととおりプレイして、私は覚悟を決めた。

(普通に言っても辞めさせてもらえない店なのだ)

 

見送り口と従業員出口は、隣同士にある。

私は見送る前に着替えてバッグを抱え、「またねー」と言うと同時に扉に体当たり(めちゃくちゃ重いのだ)して外に走った。

店長と目が合って、スタッフが車で追いかけてきた。中学で陸上部だったのと火事場の馬鹿力が働いたんだと思う。全力疾走で逃げ切った。

右折左折右折左折を繰り返してスタッフを巻いた。(諦めたのかな?その後即パネルを落とされ、クビになった。)

 

風俗街を走って走って、案内所に転がり込んだ。

 

案内所のお兄さんが匿ってタクシーを呼んでくれて、一応助かった。

 

 

また風俗に戻ると思う。今はキャバ嬢をしている。

壊れる前に逃げるのができたのは今回が初めてだった。